ふくしま三大ブランド鶏・【伊達鶏】―福島の風土と料理人の理想が磨き上げた、完成品

ふくしま三大ブランド鶏

はじめに

品質で選ばれ続ける“もう一つのブランド鶏”

福島県が誇る三大鶏ブランド「伊達鶏」。
その中で伊達鶏は、完成度と信頼性で評価され続けてきた存在です。

伊達鶏の魅力は、一口目で派手に主張する個性ではなく、調理を重ね、食べ進めるほどに実感できるやわらかな肉質と、澄んだ旨みの積み重なりにあります。

伊達鶏は「料理人が安心して選べる鶏」として、長年にわたり現場で使われ続けてきました。
その背景にあるのは、過度な希少性に頼らず、品質を安定して届けることを最優先にしてきた生産体制です。

福島の風土と向き合いながら、味・やわらかさ・扱いやすさのすべてを高い次元で整える。
伊達鶏は、日常とプロの厨房を支えるために磨き上げられてきた地鶏ブランドなのです。

本記事では、伊達鶏がどのような思想のもとで育てられ、なぜ今も選ばれ続けているのかを、
生産の背景とともにひも解いていきます。

食材概要

  • 名称:伊達鶏(だてどり)
  • 産地: 福島県伊達地方(伊達市)を中心に、宮城県丸森町を含む契約農家
  • 区分:銘柄鶏(地鶏系統を活かしたブランド鶏)
  • 特徴:やわらかさと旨みのバランス、クセの少なさ
  • 飼育:専用配合飼料・衛生管理された飼育環境
  • 位置づけ:ふくしま三大ブランド鶏の一つ

歴史・由来

開発のきっかけ・料理人の「理想」を形にする挑戦

1980年代半ばの日本では、鶏肉市場が二つの方向に分かれていたとされています。
一つは、柔らかさと供給量を重視したブロイラー。
もう一つは、歯応えと濃い旨みを持つ一方で、日常使いには向きにくい地鶏です。

当時、多くの料理人が理想として掲げていたのは、「ほどよい弾力があり、調理法を選ばず、毎日でも食べ飽きない鶏」。
その高い要求に応えるため、福島の食に向き合ってきた伊達物産の創業者が新たな鶏づくりに乗り出したのが、1985年頃のことだと伝えられています。


ルーツはフランスの銘鶏「ブレス鶏」

開発の過程で、創業者はフランスへ渡り、世界最高峰の鶏の一つとされる「ブレス鶏」に触れたとされています。

現地の生産者からは、「フランスの鶏を再現するのではなく、日本の歴史や風土に根ざした鶏をつくるべきだ」という助言を受けたと伝えられています。

この言葉が転機となり、一般的な白色系の鶏ではなく、肉質がきめ細かく旨みが強いとされる
赤鶏系(レッドブロー)を基礎とする方針が固まりました。
あわせて、福島の気候に合わせた平飼いと、比較的長めの飼育期間を組み合わせた独自の飼育体系が模索されていきます。


名称の由来・歴史ある「伊達」の地名から

「伊達鶏」という名称は、主な産地である福島県伊達地方に由来するとされています。

伊達地方は、戦国武将・伊達政宗を輩出した伊達氏発祥の地として知られ、古くから養蚕や農業が営まれてきた、肥沃な土地です。
こうした背景から、地域の名を冠すること自体が、品質と誇りを背負う意味を持っていたとも考えられます。

開発初期には、伊達市の特産である桃の果樹園の一角で、鶏を放して育てていた時期もあったと言われています。
果樹畑を動き回る環境が、後に語られる「程よい弾力」や「しなやかな肉質」につながったのではないかとされています。


約40年をかけて築かれた「銘柄鶏の礎」

1985年の誕生から、伊達鶏はおよそ40年の歳月をかけて改良と継承が重ねられてきました。

鳥インフルエンザなど、養鶏業界全体が直面してきた困難の中でも、開放的な鶏舎での平飼いや、植物性原料を主体とした専用飼料へのこだわりは、一貫して守られてきたとされています。

こうした積み重ねの結果、雑味が少なく、だしの澄んだ旨みを持つ現在の伊達鶏の味わいが形づくられていきました。

現在、伊達鶏は「会津地鶏」「川俣シャモ」と並び、ふくしま三大ブランド鶏の一つとして認知されています。

フランスの美食哲学に学びながらも、最終的には福島の風土と向き合い続けることで完成した。
伊達鶏は、そうした歴史を背負う成熟した銘柄鶏ブランドだと言えるでしょう。


飼育方法

※画像は一般的な赤鶏であり、伊達鶏ではありません。

血統管理とひな育成

伊達鶏は、肉質の良さを重視して育成されてきた赤鶏系統をルーツとする銘柄鶏です。
両親ともに赤鶏で構成される系統は、銘柄鶏の中でも限られており、その血統は計画的に維持・管理されているとされています。

ひなは、孵卵場において健康状態を厳しく確認したうえで選別され、外部からの影響を遮断した管理体制のもと、専用の鶏舎へと移されます。
育成初期の環境を安定させることで、成長過程におけるストレスの軽減が図られています。


飼育環境と飼料設計

伊達鶏の肉質を形づくる要素として、「平飼い」による運動量と、独自に設計された飼料が挙げられます。

鶏舎内では、鶏が自由に動き回れる平飼い方式が採用されており、飼育密度は1坪あたり50羽以下と、一般的なブロイラー(50〜70羽程度)と比べて低めに設定されています。
これにより、過度なストレスを抑えつつ、適度に筋肉が使われる飼育環境が保たれているとされています。

飼料には、とうもろこしや大豆、菜種油脂、米ぬかなどを中心とした、植物性原料主体の伊達鶏専用配合飼料が用いられています。
成長段階に応じた栄養設計によって、やわらかさと旨みのバランスが調整されています。

また、飼育期間を通じて、抗生物質を添加しない飼料が使用されており、安全性への配慮も徹底されています。


出荷までの管理とトレーサビリティ

伊達鶏は、一般的な若鶏よりも時間をかけて育てられることで知られています。
飼育日数はおおむね45〜80日令とされ、旨みが十分に蓄えられる時期を見極めて出荷されます。

出荷時の体重は平均で約3kg前後。
肉質が最も充実するとされるタイミングで処理されることで、調理時の扱いやすさと味わいの安定性が確保されています。

さらに、各個体の生産履歴を管理するトレーサビリティ体制も整えられており、どの農場で育てられた鶏が、どの流通経路を経て販売されているかを追跡できる仕組みが構築されています。


生産者の思い・哲学

「違いは、食べてこそ伝わる」という静かな自信

伊達鶏の生産者が語る言葉は、決して派手ではありません。
それでも、「違いは食べていただければ分かる」という言葉には、長年の試行錯誤と積み重ねに裏打ちされた確かな自信がにじんでいます。

時間をかけた飼育と、細やかな管理によって育てられる肉質は、歯切れのよい食感と、噛み進めるほどに広がる鶏本来の旨みが特徴だとされています。
特定の調理法に頼らず、素材そのものの力で評価される鶏でありたい。
その思いが、伊達鶏の味づくりの根底にあります。


安全・安心を「言葉ではなく仕組みで示す」姿勢

福島第一原発事故以降、生産者は食の安全に対する社会の目が一層厳しくなったことを、誰よりも現場で実感してきました。だからこそ伊達鶏では、情報公開や生産履歴の管理、安全性の確認に力を注いできたとされています。


抗生物質を添加しない飼料の使用をはじめ、日々の飼育管理を積み重ねることで、
「安心して選んでもらえる状態」を維持することが、生産哲学の一つとなっています。

安全性を強く語るのではなく、当たり前として実践し続ける。その姿勢が、信頼へとつながってきました。


地域とともに歩むブランドであるために

伊達鶏は、会津地鶏、川俣シャモと並ぶ「ふくしま三大ブランド鶏」の一つとして、福島の食文化を支える存在でもあります。

単なる特産品ではなく、地域の誇りとして次の世代へとつないでいくこと。
生産者は、伊達鶏を通じて福島の美味しさやものづくりの姿勢を、全国、さらには海外へ伝えていきたいと考えているとされています。

復興や地域活性化という言葉を前面に出すのではなく、良いものを作り、届け続けることが、結果として地域の力になる。
その考え方が、伊達鶏の歩みに重なっています。

まとめ

『農は国の基なり』という志のもと、徹底した血統管理と手間を惜しまない長期飼育によって守り抜かれてきた伊達鶏。

震災という困難を乗り越え、今や『ふくしま三大ブランド鶏』として確固たる地位を築いたその背景には、生産者たちの飽くなき探究心と郷土への誇りがありました。


私たちが伊達鶏をいただくとき、その一切れには福島の豊かな自然と、人々の情熱が宿っています。本物を追求し続ける産地の物語を噛み締めながら、その贅沢な美味しさを心ゆくまで味わいたいものです。

ふくしま三大ブランド鶏とは―会津地鶏・川俣シャモ・伊達鶏、三つの系譜
福島を代表する三つのブランド鶏、会津地鶏・川俣シャモ・伊達鶏。 それぞれの成り立ちや特徴、共通する飼育思想を整理し、個別記事への入口として全体像を解説します。

※本食材は、収穫時期や生育状況に応じて出荷されるため、販売時期・数量には限りがあります。最新の販売状況や次回出荷については、公式サイトをご確認ください。

購入案内(非アフィリエイト)
● 製品名:伊達鶏
● 価格:掲載なし(リンク先でご確認ください)
● 購入元:[ 産地直送 鶏肉卸専門 さくらフーズ

参考文献

分類出典元内容概要URL
行政資料福島県 農林水産部福島県の畜産振興施策、銘柄鶏・地鶏に関する基本情報https://www.pref.fukushima.lg.jp
行政資料福島県 畜産課・畜産振興関連資料県内養鶏の現状、ブランド鶏の位置づけhttps://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/
行政・統計農林水産省地鶏・銘柄鶏の定義、食鳥流通の基礎資料https://www.maff.go.jp
業界団体日本食鳥協会鶏肉生産・流通・品質管理に関する業界資料https://www.j-chicken.jp
市場・流通食肉流通統計関連資料銘柄鶏の市場流通・需給動向https://www.fmric.or.jp
産直・販売JAタウン伊達鶏を含む福島県産鶏肉の販売情報https://www.ja-town.com
生産者・地域福島県農業関連ポータル福島県内生産者・農業ブランド情報https://www.fukushima-agri.jp
学術・参考畜産・養鶏関連書籍・論文鶏種改良・飼育方法・肉質評価の一般知見(各専門書・論文)

ご訪問いただきありがとうございます。

本サイトは、日本各地に受け継がれてきた希少食材・伝統食材について、
その背景にある歴史、栽培・生産の工程、地域文化、そして生産者の想いを記録し、
後世へ正確に伝えることを目的とした情報アーカイブです。

筆者は調理人として25年以上、和食を中心に食材と向き合ってきました。
現場で培った知見をもとに、
「なぜこの食材が特別なのか」
「なぜ守り継がれてきたのか」
を、できる限り一次情報・公式資料に基づき、誠実に整理・発信しています。

希少食材は、単なる“珍しさ”ではなく、
土地の風土、人の営み、技術の積み重ねによって成立しています。
本サイトが、食に関心を持つ方々にとっての信頼できる参照点となり、
また、生産者や地域の価値が正しく伝わる一助となれば幸いです。

お問い合わせはこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました