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【阿久津曲がりネギ】と【新里ネギ】 — 甘みと柔らかさを生んだ土地と技術、歴史を解説

希少食材

※この記事には広告が含まれています。

気になる商品を紹介していますが、読者の方にとって良い選択になるよう、できるだけ分かりやすくまとめています。

はじめに — 希少な2つの曲がりねぎ

阿久津曲がりネギ(あくつまがりねぎ)
福島県郡山市阿久津(あくつ)地区に伝わる在来系の長ねぎで、軟白部が弓状に曲がるのが特徴です。口当たりが柔らかく甘みが強いと評され、地域の栽培技術(夏に一度掘り起こして斜めに植える「やとい」が独自の形と食味を育んできました。令和4年2月3日にGI(地理的表示)に登録され、郡山市や保存会による保存栽培が続けられている伝統野菜です。

新里ねぎ(にっさとねぎ)
栃木県宇都宮市新里(にっさと)町で長年育てられてきた在来の曲がりねぎ。柔らかく甘い食味、加熱で一層甘みが増す点が特長で、在来種として自家採種を重ねてきたことから地域固有の性質が強く、こちらも平成29年5月26日にGI(地理的表示)に登録された伝統野菜です


阿久津曲がりネギ

歴史

阿久津曲がりネギの起源は明治末期(明治30年ころ)、富山方面からの種子が阿久津地区で播かれたことに始まるとする伝承があります。当地の粘土質の土壌や気候に適応する品種として選抜・改良が進み、昭和初期には郡山市全体へ普及しました。平成に入ってからも地域の保存会が原種保存と栽培技術の継承を続けています。

特徴

甘さとアミノ酸量: 郡山女子大学などの分析では、一般的な一本ねぎと比べて総遊離アミノ酸量が1.5〜2倍、糖度(Brix)もおおむね3〜4ポイント高いという結果が報告されています。アミノ酸が多いことは旨味成分の豊富さを示し、糖度の高さは「加熱でとろっとした甘み」が出やすいことを裏付けます。

食感: 葉身・葉鞘ともに柔らかく、火を通すとさらにトロッとした食感になる。

形状: 軟白部が曲がる「曲がりねぎ」特有の姿で、葉元が扇形に広がる傾向がある。

生産方法

Above view of piles of brown crumbly sand in desert. Concept of drought.

阿久津曲がりネギの栽培特徴は、粘土質で土寄せが難しい土地条件に対応するための技術にあります。代表的な技術は「やとい」と呼ばれる作業で、夏に一度ネギを抜いて斜めに植え替え、軟白部を確保すると同時に、植え替えによる軽いストレスが甘みを引き出すとされています。土の少ない条件で軟白化を図ることが曲がり形状の成立要因でもあります。収穫は主に秋から冬にかけて行われます。

生産者の声

産地保存会の生産者は、伝統のやとい技術を守りながら、消費者に「甘い・柔らかい・風味が良い」という特性を伝えていくことを重視しています。ねぎを一度抜いて斜めに植え直す手間はかかるものの、それが阿久津曲がりネギらしさを保つ重要な工程であると生産者は語っています。ねぎサミット等の場で生産者が技術の意義を説明しているレポートもあります。


新里ねぎ

歴史

新里ねぎは宇都宮市新里町で江戸時代から自家採種で受け継がれてきた在来系の曲がりねぎです。長年にわたる地域での栽培により、他産地にはない食味特性(特に甘さと柔らかさ)が育まれました。産地組合による保護・PRや、地理的表示(GI)への登録により、地域資源としての価値が公式に認められています。

特徴

甘みと食感: 新里ねぎは生で食べても辛味が比較的少なく、加熱すると甘さと柔らかさが顕著に増すのが特徴です。これは葉や軟白部の組織構造や糖・遊離アミノ酸の蓄積の仕方に由来すると考えられます。産地情報では、葉の付け根にうろ(透明なぬめり成分)が豊富である点も食感の特徴に挙げられます。

生育リズム: 在来種の特徴として成長がやや遅く、晩秋から冬にかけて葉の生育が加速するため、収穫期が長めで貯蔵・出荷調整がしやすい点も産地メリットとして報告されています。

生産方法

新里ねぎも曲がりねぎの一種として、在来の種を守りながら地域に合った栽培体系を守っています。具体的には自家採種・輪作・土寄せや栽培時期の調整など、長年培われてきた経験的な管理が中心です。産地によっては栽培組合を通じて品質管理や出荷調整(規格・箱詰め)を行い、都市部市場・直売所向けのブランド化を進めています。

生産者の声

新里ねぎの生産者は「江戸時代から続く種を守ること」「加熱したときの独特の甘さを消費者に届けること」を重要視しています。一方で後継者不足や気候変動、販路確保といった課題にも触れられており、GI登録や産地PRを通じたブランド化が地域の持続可能性に寄与している旨の発言が見られます。


阿久津曲がりネギと新里ねぎ — 比較ポイント

  1. 起源と保存
    • 阿久津:明治末期に富山方面の種由来で、昭和初期から郡山で普及。保存会が存在。
    • 新里:江戸時代からの在来種として自家採種で継承。GI登録などで産地保護が進む。
  2. 味・成分
    • 阿久津:総遊離アミノ酸が多く、糖度(Brix)も高め(既報の分析で基準種より3〜4高い)。旨味と甘みが強い。
    • 新里:加熱での甘み増加、生での辛味の少なさが特徴。葉身にも旨味成分が豊富。
  3. 栽培技術
    • 両者とも地域の土壌・気候に合わせた伝統技術を残すが、阿久津は「やとい」による植え替えで曲がり・甘みを出す点が特に特徴的。
  4. ブランド化と保全
    • 新里はGI登録により法的保護とブランド力を強めている。阿久津は保存会や市の伝統野菜紹介などで地域内外への周知を行っている。

料理・食べ方の提案

  • 加熱調理(煮物・焼き物・鍋):どちらも加熱で甘みが増すため、鍋や焼き物、炒め物でそのとろりとした甘さを活かすのが基本。
  • 白葱のように使う:白髪ねぎや薬味として使うと、辛味の少ない品種は生食でも活躍。特に新里ねぎは生でも食べやすい。

まとめ

土地・技術・味の関係

阿久津曲がりネギと新里ねぎは、どちらも「土地」と「人の技」が育んだ地域資源です。粘土質の土や「やとい」などの伝統作業が阿久津の曲がりと甘さを作り、新里では在来種としての自家採種と地域の生育リズムが柔らかさと特有の甘さを育てました。近年はGI登録や保存会活動、産地のPRを通して、単なる郷土野菜から広く価値を伝える動きが進んでいます。味わう際は、加熱して甘みを引き出す調理(鍋・煮物・焼きねぎ)をぜひ試してください。

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● 製品名:阿久津曲がりねぎ
● 価格:掲載なし(リンク先でご確認ください)
● 購入元:[JA福島さくら「あぐりあ」

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● 製品名:新里ねぎ
● 価格:掲載なし(リンク先でご確認ください)
● 購入元:[ポケットマルシェ


参考文献(主要出典)

No.出典名(表示)補足
1農林水産省:地理的表示登録「第113号:阿久津曲がりねぎ」阿久津曲がりネギの登録情報・概要。【農林水産省
2郡山市公式:「郡山市の伝統野菜『阿久津曲がりねぎ』」起源、やといの説明、地域の紹介。【郡山市公式ウェブサイト
3郡山県(福島)PDF:「阿久津ネギ(阿久津曲がりネギ)」郡山女子大の分析結果(アミノ酸・Brix)を含む技術的資料。【福島県公式サイト
4新里ねぎ(地理的表示産品情報・PDサイト)新里ねぎの在来性・特性・栽培概説。【地理的表示産品情報発信サイト
5GI/産地特集(新里ねぎ関連)および地域紹介記事新里ねぎの甘みや食味についての解説記事。【Japan Made
6全国ねぎサミット等の報道・取材記事生産者の技術説明(やとい等)やイベントでの紹介。【全国ねぎサミット2018 in にいがた

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