PR

地域に根付く幻の大根─【女山大根】と【米良糸巻大根】の歴史・魅力を解説

希少食材

※この記事には広告が含まれています。

気になる商品を紹介していますが、読者の方にとって良い選択になるよう、できるだけ分かりやすくまとめています。

はじめに ― 地域に根差した2つの大根

日本各地には、その土地の風土と暮らしに根差した「在来野菜」があります。その中でも、色・形・風味で人々を惹きつけるのが、佐賀県多久市西多久町の女山大根(おんなやまだいこん)と、宮崎県西米良村の米良糸巻大根(めらいとまきだいこん)です。

どちらもその地域の風土・歴史と深く結びつき、「ただの大根」ではない“食文化の担い手”です。本記事では、両者の成り立ち、その特徴、旬や栽培、生かし方までを比較しつつ紹介します。

女山大根

歴史

女山大根は、江戸時代から佐賀県多久市西多久町(旧・女山村)で栽培されてきた在来種です。 かつては藩主への献上品として扱われ、「殿様に献上された」との逸話もあります。

ただし、時代が進むにつれて少数の自家用栽培にとどまり、やがて青首大根との交雑や農業形態の変化で、生産量は激減。一時は「消えかけた」状態でした。

しかし、1980年代以降、県や地元農家、研究機関の努力によって原種に近い形に戻す再生プロジェクトが始まります。交配と選別を繰り返し、数年かけて復活を遂げました。

そして2022年6月29日、女山大根は「GI」(産品国の地理的表示)として佐賀県内では初の登録農林水産物となり、現在は地元の直売所などを通じて販売・流通され、地域おこしのシンボルのひとつとなっています。

特徴と糖度・肉質

●女山大根の糖度は一般的な青首大根の1.5倍と言われています。(※一般的な青首大根の糖度は5度程度)

女山大根は、外皮が赤紫〜紫がかった赤首大根。根と葉にはアントシアニンなどのポリフェノールを含むとされ、見た目にも鮮やか。

大きさは驚異的で、通常は4〜5kg程度、成熟したものでは10kgを超えることもあるという記録があります。長さ80cm、胴回り60cmを超えることも珍しくなく、その迫力は「足より大きい」と形容されるほど。

それでも肉質は緻密で「す」が入りにくく、煮崩れしにくいのも大きな特徴。「大根特有の辛みがほとんど感じられない」「やさしい甘さがある」との声があります。

これらの特性ゆえ、煮物や汁物、和え物など、料理の素材として高く評価されています。

生産方法と旬の時期

生産地は、佐賀県多久市西多久町の山間部。八幡岳・徳連岳などに囲まれた盆地。地下からの給水が豊富で、土壌は玄武岩などの転石が堆積した水はけの良い砂礫質。大根のように根が深く伸びる作物に適した土地です。

植え付けは夏〜秋(8月中下旬播種)、収穫は12月から翌年2月ころまでが中心。一般的な青首大根と比べ、ゆっくり時間をかけてじっくり育てられます。

大きすぎるため収穫・洗根・出荷に労力を要するほか、高齢化などで担い手不足も指摘されています。

有用な調理方法

女山大根の「色・甘み・煮崩れしにくさ」を生かした調理は多彩。地元でもさまざまなメニューが開発されています。

ふろふき大根:白みそやなどででソースを作り、女山大根のホクホク感と甘さを引き立てる。

呉豆腐(ごどうふ)風:すりおろした女山大根に豆乳などを加え、豆腐のような食感と甘みを楽しむ。

コンポート/プリン:大根の甘さと色を活かし、酒かすや甘味と合わせることで、デザート感覚の新しい大根料理に。

もちろん、定番の煮物やおでんにも — 一般の大根より甘みがあり、汁やダシとの相性も良好。

近年はこうした創作料理や加工の取り組みで、女山大根は「和・洋・甘味」を問わず使われる多用途な伝統野菜として見直されています。


米良糸巻大根

歴史

米良糸巻大根は、宮崎県西米良村に古くから根付く在来大根。資料などによれば、16世紀初頭にはすでに栽培されていた可能性があり、500年以上の歴史があると言われています。

その特徴的な見た目、栽培方法、そして生活との結びつきから、西米良村の山村文化とともに生きてきた野菜でした。特に焼畑(コバ)農法で育てられ、粟(あわ)や稗(ひえ)などとともに山村の重要な食糧でありました。

焼畑での栽培は、村の中山間地という立地、地形、土壌と密接に関係しており、自然と共存する形で伝統が守られており、 現在でもこの大根は米良糸巻大根として、伝統野菜としての価値を守る活動が続いています。

そして令和元年9月27日に「GI」(産品国の地理的表示)として登録農林水産物となりました。

最近では、地域の加工グループによる漬物・切り干し大根といった商品化も進み、ブランド化の取り組みも行われています。

特徴と糖度・肉質

●米良糸巻大根糖度は一般的な青首大根より2度~3度高いと言われています。(※一般的な青首大根の糖度は5度程度。)

名前の由来は、根の表皮に「糸を巻き付けたような」紫の縞模様が入ることから。白地に紫の筋模様のもの、紫がかったもの、丸形〜紡錘形〜長形など形状もさまざまで、非常に個性的です。

糖度は、一般の青首大根より2〜3度高いとされ、生でかじっても甘みが感じられることが多いようです。肉質は緻密でやわらかく、辛みが強すぎず、食べやすいのも大きな特長。

また、煮ものにしても味が染みやすく、形崩れしにくいため、おでん、煮しめ、猪汁のような山村料理に重宝されてきたようです。

生産方法と旬の時期

伝統的には焼畑(コバ)農法で栽培されてきました。西米良村のような山間地では、水田や平地がほとんどなく、焼畑が数少ない耕地であったためです。

化学肥料を避け、有機質肥料主体、あるいは無肥料の自然な栽培が好まれてきたと記録されており、「土地の力を借りた野菜」として育てられてきました。

種まきは9月~10月初旬が一般的。焼畑では草火入れ(木を燃やして畑をつくる)→ 翌朝に播種、という伝統的な手法がとられることもあったようです。

収穫は11月から2月ごろにかけて。山村の厳しい気候、少ない耕地、手間のかかる栽培方法… こうした条件の中で、少量・分散的に栽培されるため、流通量は少なく、村内消費が中心でした。

近年では、畑栽培に切り替えられた例もありますが、焼畑栽培の伝統、自然栽培の思想を守る農家もあり、貴重な在来野菜として継承が試みられています。

有用な調理方法

米良糸巻大根は、その甘み・肉質・個性的な風貌を活かした料理・加工が多彩です。伝統的な山村の知恵とともに、現代でもその魅力が再評価されています。

生で味噌をつけて:焼き畑の畑から抜いて、その場でかじったという昔ながらの食べ方。甘みとほんのり辛みのバランスが良く、山仕事の合間の“おやつ”として親しまれてきた。

なます・大根おろし・サラダ:肉質が緻密で柔らかいため、生食にも向き、紫の筋模様が料理に彩りを添える。特に酢を加えると色が映え、見た目にも美しい。

煮もの・おでん・煮しめ・猪汁など:味が染みやすく、煮崩れしにくいため、和の煮込み料理に最適。山村の冬には定番の食材だった。

切り干し大根や干し大根:干すことで甘みと旨味が凝縮。保存性も高く、山あいの暮らしで重宝された加工法。近年は無添加の切り干しとして商品化されており、栄養価も高く注目されています。

また、最近では地域の加工グループによって、漬物や干し野菜といった付加価値商品の開発が進んでおり、地域ブランドとしての再評価も進んでいます。


両者の比較と意味 ― なぜ「地域の大根」は大切か

項目女山大根米良糸巻大根
主な産地佐賀県多久市西多久町宮崎県西米良村
歴史江戸時代〜、藩主への献上など16世紀〜、山村の焼畑文化と共に
見た目赤紫〜紫の赤首大根、大きく重い白地に紫の縞模様、丸〜紡錘〜長形など形状多様
肉質・糖度緻密で煮崩れにくく、甘みが強い緻密で柔らかく、一般大根より甘みがある
栽培方法砂礫質の水はけ良い土地で、通常畑伝統的には焼畑。現在は畑栽培もあり
旬(収穫期)12月〜2月11月〜2月
流通・普及GI登録で地域ブランド化、直売所中心村内消費中心、近年少量ずつ外部流通へ試み

このように、両者は地域の地形、歴史、暮らしに根ざした「ご当地大根」であり、ただの食材ではなく、その地域の文化・自然とのつながりを象徴する存在です。復活や継承、地域ブランド化という取り組みには、地域の誇りと未来への希望が込められています。

また、食の多様性や地域資源の保護、生物多様性の観点からも、こうした在来種・伝統野菜の存在はとても重要です。現代の食卓や流通、大量生産中心の農業では失われがちな「地域固有の風味・個性」をつなぐ役割を果たしています。


まとめ

女山大根と米良糸巻大根は、どちらも「地域に根差した在来大根」として、風土・歴史・暮らしと深く結びついた野菜です。

女山大根は佐賀県多久市の盆地で育まれた、巨大で甘く、煮崩れしにくい赤首大根。近年の復活と国によるGI認定で、再び注目を集めています。

一方、米良糸巻大根は宮崎県西米良村の焼畑文化とともに500年以上続く大根で、紫の縞模様と甘み、柔らかな肉質が特徴。切り干し、煮物、生食など、多様な食べ方で村人の暮らしを支えてきました。

両者は似て非なる個性を持っており、それぞれの土地の自然と人々の営みによって育まれてきた「文化としての大根」です。現代の食生活においても、その価値は失われるどころか、むしろ再評価されるべき伝統的な希少食材と言えます。

購入案内(非アフィリエイト)
● 製品名:女山大根
● 価格:掲載なし(リンク先でご確認ください)
● 購入元:[多久市ふるさと情報館 幡船の里

購入案内(非アフィリエイト)
● 製品名:米良糸巻大根
● 価格:掲載なし(リンク先でご確認ください)
● 購入元:[西米良温泉「ゆた~と」

参考文献

資料内容
佐賀県多久市役所「…『女山大根』がGI登録されました。」女山大根の GI 登録、第121号の詳細と生産地情報など。 (city.taku.lg.jp)
農林水産省「第121号:女山大根 登録情報」登録品目としての正式情報。産地、生産団体、登録内容が確認できる。 (農林水産省)
INPIT「女山大根-チダンカード6256041」女山大根の特徴(大きさ、肉質、糖度、色など)を整理。 (INPIT)
FNNプライムオンライン「足より大きい!糖度高く美味『女山大根』…」女山大根の大きさ・糖度・復活の歴史などを紹介。 (FNNプライムオンライン)
朝日新聞「伝統『女山大根』で地域作り、活性化期待 …」最近の地域イベント・祭りでの活用や、地域活性化の取り組み事例。 (朝日新聞)
サガテレビ「多久市で女山大根まつり …」女山大根のまつりでの提供料理、地域でのPR活動の様子。 (サガテレビ)
宮崎県西米良村「いとまき倶楽部」紹介ページ米良糸巻大根を伝統野菜として守り、加工・販売を行う地元女性部の活動。 (miyazakitourism.com)
JRE MALL「米良糸巻大根 切り干し(西米良村産)」米良糸巻大根の歴史・特徴(肉質・甘みなど)、乾燥・加工品としての説明。 (JRE MALLふるさと納税)
楽天市場「米良糸巻大根 切り干し 20g×7袋セット」切り干し大根としての流通例、保存性・利用法例を紹介。 (楽天市場)
TURNS「伝統野菜を守る“生涯現役”の女性たち …」西米良村で地域資源として糸巻大根を守る人々の取り組み、地域の背景と文化。 (TURNS(ターンズ)これからの地域とのつながりかた)
農林水産省「第84号:米良糸巻大根 登録申請公示」米良糸巻大根の地理的表示制度への申請情報、公示内容。 (農林水産省)

ご訪問ありがとうございます。

調理人歴25年、和食を中心に様々な食材と出会いがありました。

「皆様の食に対する好奇心を少しでも刺激できたら。」
「生産者の方々のお役に少しでもたてれば。」

そんな気持ちを大切に、伝統野菜や希少な食材をピックアップし情報を発信してまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。

お問い合わせはこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました