はじめに
二つの桃

日本には、全国に知られぬまま静かに磨き上げられてきた“究極の桃”が存在します。
その名は 「包近の桃」(かねちかのもも)、そして 「とろもも」。
一般の市場ではまず出会えず、桃好きですらその存在を知らないことも多い。
しかし一度口にすると、ただの果物という枠を超え「これは芸術品か」と思わせるほどの衝撃を与える特別な2品種です。
「包近の桃」は、とろける甘さと芳醇な香りをもつ、ギネス級の“糖度と芳香の桃”。
「とろもも」は、指で触れるだけで崩れそうなほど繊細で、まさに “液体のような桃” と言われる存在。
どちらも、少量生産・限定流通・生産者の極端な手間によってのみ成り立つ“希少な桃”。
本記事では、桃の世界でも特別な価値を持つ 包近の桃と とろももについて、歴史・特徴・生産方法を詳しく解説します。
食材概要
包近の桃 (かねちかのもも)

- 産地:大阪府岸和田市包近町を中心に一部地域で極少量生産
- 品種:包近の桃は「はなよめ」「日川白鳳」「白鳳」「清水白桃」「まさひめ」などを時期に合わせて栽培。
- 果肉:乳白色で、核の周りにやや赤みがさす、しっかりとした緻密な果肉、独特の甘い香り
- 味わい:高糖度・とろけるように柔らかい・果汁が非常に豊富
- 特徴:完熟の香りが強い。糖度のギネス記録保持
- 流通量:非常に少なく予約販売が主流
※「包近の桃」とは地元の農家で構成される「包近桃共同組合」が商標登録したブランド名です
※「まさひめ」とは包近の桃で使用される品種で、ギネス記録はこの「まさひめ」で樹立されました
とろもも

- 産地:福島県福島市の古川果樹園で限定生産
- 品種:「あかつき」「暁星(ぎょうせい)」「まどか」「ハネージュ」「尚美(しょうび)」等
- 果肉:超完熟。指で押せば崩れるほど柔らかい
- 味わい:強烈な甘さ・とろける食感・濃厚でジューシー・豊な香り
- 特徴:圧倒的な糖度。糖度15.5度以上保証、中には20度超えも
- 流通量:完熟状態での出荷が難しく、極めて限定的
歴史・由来
包近の桃・歴史と由来
・伝承
その昔、山から出てきた鬼が悪さをするのを防ぐため、鬼が嫌う桃を植えたという伝説があります。(桃と赤鬼)
包近の桃の歴史は、明治時代に大阪の泉州で本格的に桃の栽培が行われるようになったのが始まりといわれています。
・近代の技術
何度かの盛衰を繰り返しましたが、近代になると技術革新が進み、光センサー糖度計の導入などによる糖度の客観的測定を可能に。これにより一定以上の品質(高糖度)のものだけを選別して出荷できるようになりました。
また、土壌の改良と研究も行われ、微生物を利用した土壌改良剤(バクタモン)を導入。これにより土中の肥料分が無駄なく作物に吸収され、高糖度の桃が生まれました。
・そして頂点へ

包近の桃は2015年に「糖度22.2度」を記録し、ギネス世界記録に公式公認され、世界が認めた桃となったのです。
※「糖度22.2度」は包近の桃の平均値であり、ピンポイントでは「糖度30度」を超えるものも。
香り、味、外観、食感、手触り。包近の桃は五感で味わう、最も完成された桃と言えるでしょう。
とろももの歴史・由来
・とろももの始まり
「とろもも」は福島県にある果樹園、1883年(明治16年)から5代続く古山果樹園で生産されています。1949年(昭和24年)に果樹園の3代目が本格的に桃の栽培を始めました。
「桃の甘さを極限まで追求する」という発想から、試行錯誤を繰り返し独自の栽培方法を確立。
しかし、2011年東日本大震災の影響で未曾有の被害を受け、食物への風評被害などから桃の価値はほとんどなくなってしまいました。
・復活への挑戦
そんな中、古山果樹園の5代目(古山 浩司氏)が、どん底から世界一価値のある桃を復活させるために、「包近の桃」の持つギネス記録「糖度22.2度」にチャレンジすることを決意。
土壌改良を繰り返しギネス記録にチャレンジし続けた結果、
2017年にギネス記録を超える「糖度23.4度」を記録。
さらには2021年に驚愕の「糖度40.5度」を記録しました。
そしてこの桃には1玉300万円というプレミアムな値がついたというから驚きです。
※「糖度40.5度」を記録した「とろもも」は「あかつきネオ」という品種です。
・驚異の桃の誕生

こうして復活を遂げたとろもも。“液体のような桃”(霜降り状でトロのような状態)とも称されるほど唯一無二の食感は、実は生産者の哲学と技術の結晶によって生まれたものなのです。
包近の桃・栽培方法
栽培管理の徹底

包近の桃は、極めて高い糖度と外観品質を維持するため、土地の気候を生かした独自の栽培管理が行われています。
まず樹づくりでは、枝を広げて強い日射を多く取り込み、果実に十分な光が届くように整枝します。着果後は早い時期に摘果して実の数を絞り、限られた果実に養分を集中させることで、大玉で糖度の高い果実に仕上げます。
果実は傷に弱いため、袋がけで雨・風・害虫を徹底的に防ぎ、外観を守ります。
収穫は完熟の瞬間を狙い、果実を傷つけないよう一玉ずつ手作業で行われます。特に包近の桃の品種の1つ「まさひめ」は糖度が高いほど果肉がデリケートになるため、早朝に収穫されそのまま選果・出荷に進みます。
とろもも・栽培方法
栽培管理の繊細さ

とろももは、「とろける食感」と「極上の甘さ」を追求するため、一般的な桃栽培よりもさらに繊細でデリケートな管理が求められます。
まず、栽培地は気候や土壌だけでなく、樹と樹の間隔、土壌の水はけ、根張り、風通し、日当たりなどの条件を慎重に見極める事が必要。
果肉が柔らかく崩れやすいため、過湿や蒸れ、風通しの悪さは致命的。とろもも生産者はこうした条件を総合的に管理し、品質を保ちます。
そして最後に――収穫。とろももは果肉が非常に柔らかく、熟度が進むと手で触れただけで凹んだり、崩れたりするほど。そのため、完熟の見極め、手で包むように収穫、1玉ずつクッションで包んで梱包 という、一般流通ではほぼ不可能な手間を伴います。
こうした“手仕事の徹底”があって初めて、とろももの独特のとろける世界が果たされるのです。
生産者の声
【包近のもも】・意訳
包近の桃を支えてきた生産者は、「ギネス級の糖度」を誇る果実をつくるために、地域が一体となった技術と努力を積み重ねてきました。
農林水産省「aff」より意訳
「包近の桃は、地域全体で高糖度の桃づくりに挑戦してきた歴史がある。1本1本の木を大切に育て、糖度の限界に挑戦する文化が根づいている。」
出典:農林水産省『aff(2019年5月号)』
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1905_06/gwr.html
食文化研究レポートより意訳
「包近の桃は“生みの苦労を語れば一冊の本になる”と言われるほど、試行錯誤の積み重ね。代々受け継がれてきた技術こそが、唯一無二の味を支えている。」
出典:食文化研究所「包近の桃 まさひめ」
https://www.food-culture.jp/kenkyu/report114.html
これらの言葉から、包近の桃は単なる果物ではなく、地域の誇りそのものとして育てられていることがわかります。
【とろもも】・意訳
“とろける食感の桃”として話題を呼ぶ「とろもも」は、福島県の果樹園が高度な選果基準と徹底した栽培管理のもとで生み出したブランドです。
週刊ポスト・NEWSポストセブン記事より意訳
「世界一甘い桃をつくりたい。その思いで何百本も木を植え替え、1玉ずつ改良を積み重ねてきた。桃作りは科学であり、芸術でもある。」
出典:NEWSポストセブン(2022)
https://www.moneypost.jp/942804/
チーム福島プライド公式より意訳
「甘さだけでなく、口に入れた瞬間の“とろける食感”まで徹底的に追い込んだ。桃のポテンシャルを信じ、その可能性を最大限に引き出したい。」
出典:TEAM FUKUSHIMA PRIDE
https://team-fukushima-pride.com/1503
このように、とろももは「奇跡の食感」をとことん追求する姿勢から生まれており、単なる商品ではなく“技術の集大成”といえるブランドです。
まとめ

2つの桃は方向性がまったく違うにも関わらず、どちらも“その品種でしか体験できない世界”を持っています。
市場に出回らない希少性、生産者の手間と情熱、そして完熟でしか味わえない特別な美味しさ。
これらを考えると、「国内最高峰の桃」と呼んでも過言ではありません。
購入案内(公式/非アフィリエイト)
● 製品名:包近の桃
● 価格:掲載なし(リンク先でご確認ください)
● 購入元(公式):[マルヤファームプラス]
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● 製品名:とろもも
● 価格:掲載なし(リンク先でご確認ください)
● 購入元(公式):[古川果樹園]
参考文献
| 分類 | 参考文献名 | 内容・目的 | 出典URL |
|---|---|---|---|
| 包近の桃 | 包近の桃「まさひめ」ギネス認定(農林水産省) | 包近の桃の歴史・糖度記録・ブランド価値の裏付け | https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1905_06/gwr.html |
| 包近の桃 | 食材研究「包近の桃 まさひめ」レポート | 産地の歴史・品種情報・地域の栽培背景 | https://www.food-culture.jp/kenkyu/report114.html |
| とろもも | TsukijiIchiba.com とろもも商品ページ | 糖度基準(15.5度以上)・流通方法・特徴 | https://www.tsukijiichiba.com/user/product/19728 |
| とろもも | 婦人画報「匠の桃 お取り寄せ」 | とろももの紹介・食味評価・生産者の取り組み | https://www.fujingaho.jp/gourmet/seasonal/a44668979/peach-otoriyose4-230804/ |
| 桃の一般栽培技術 | JA全農山形「もも栽培ガイド」 | 剪定・摘果・日照管理など基礎的な桃栽培技術 | https://www.zennoh-yamagata.or.jp/fruits/peach |



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